「文学表現と思想の会について」(1991年3月) (会誌「行路」創刊号より)

 人間は、いうまでもなく、他者との関係に生きている。そうした人間にとって、表現とは人間が人間として存在するための本質的な働きである。それゆえ、様々な段階や様々な形態での表現がある。赤ん坊は泣くことによって、母親に空腹や不快をうったえる。母親とのコミュニケーションを核として人間関係を学び、成長するに応じて、社会に対する適応力を獲得する。しかし、あまりに過保護にすると適応力が育たず、自閉的な性格を持つようになる。その場合でも、他者との関わりを感じないだけであって、実際には母親の保護とか他者を感じないでも生きていける条件が前提としてある。つまり、自分からは外部に働きかけないが、受動的に外部と関係している。

 こうした自閉的な状況を生み出す背景は、何も個々の人間に関するだけではなく、社会全体、国全体にもおよんでいる。現代は情報化社会と言われるが、あふれる情報の前で呆然としているのが実情ではないか。それはTVを考えてもわかる。情報が一方的に与えられ、辛うじてそのチャンネルを変えるか消すかして、意志をあきらかにするのみである。そのように自閉的になることでしか自分を表現できない。

 それは、個々の人間が表現手段を持っていないことにも原因する。受動的な対応では、ますます自閉的状況を強めるだけである。それゆえ、稚拙でもよいから自前の表現をもとめる必要がある。

 この会では色々な表現の形があるが、文学をとおして自己を表現する方法を選択する。表現と思想は不可分ものである。思想は表現をとおして、はじめて思想たりうる。表現は思想を深めることによって、さらに自らも深まる。与えられるだけでは思想は深まらない。せいぜい揚げ足取り的な感想者になるだけである。稚拙であっても、とにかく自分の言葉で表現するのみである。そこで、他人の検討にも曝されるだろうし、鍛えられもする。

 そのためには、何よりも思想を富ませるために文学だけでなく様々な領域の知識を必要とする。また、思想が依って立つ現代の状況を学ぶ必要もあろう。むろん、それらは個々の状況との関わりの中で捉えるべきものであろう。この会を、そうした個々のメンバーが、自らの思想を表現するための場としたいと考える。

                                            秋吉 好

 

 

 毎月、第二土曜日に2時から5時まで、大阪天満橋「エル大阪」で小説を中心とした勉強会を行なっています。会員を募集しています。

 会費(一回の参加費)1000円

 また同人誌『異土』を有志によって、刊行しています。

 

 詳しい事、お問い合わせは、「お問い合わせ」フォームからお願いします。

 

☆「異土」16号ができました。内容は「異土」のページへ。

☆2019年のテキストが決まりました。「日程・テキスト」のページへ。

☆「異土」14号 湖海かおる『半家族』が神戸エルマール文学賞佳作に入選しました。

 

 

2018年のテキスト 

  1月13日 中勘助『銀の匙』(岩波文庫)

  2月10日 佐伯一麦『渡良瀬』(新潮文庫)

  3月10日 芹沢光治良『巴里に死す』(新潮文庫)

  4月14日 小川洋子『ことり』(朝日文庫)

  5月12日 色川武大『百』(新潮文庫)

  6月9日  嘉村礒多『業苦・崖の下』(講談社文芸文庫)

  7月14日 泉鏡花『歌行燈』(岩波文庫)

  8月11日 佐多稲子『夏の栞』(講談社文芸文庫)

  9月8日  尾崎一雄『暢気眼鏡・虫のいろいろ』(岩波文庫)

  10月13日 大城立裕『小説・琉球処分』(講談社文庫)

  11月10日 林京子『上海』(中公文庫)

  12月8日 西野辰吉『秩父困民党』(講談社文庫)

 

2017年のテキスト

  1月14日 永畑道子『恋の華・白蓮事件』(文春文庫)

  2月11日 野口冨士男『風の系譜』(講談社文芸文庫)

  3月11日 黒島伝治『渦巻ける烏の群れ』(岩波文庫)

  4月8日 堀辰雄『風立ちぬ・美しい村』(新潮文庫)

  5月13日 遠藤周作『わたしが・棄てた・女』(講談社文庫)

  6月10日 松下竜一『豆腐屋の四季』(講談社文芸文庫)

  「異土」14号ができました。

  7月8日 辻原登『村の名前』(文春文庫)

  8月12日 石川達三『生きている兵隊』(中公文庫)

  9月9日  瀬戸内寂聴『美は乱調にあり』(岩波現代文庫)

  10月14日 木山捷平『長春五馬路』(講談社文芸文庫)

  11月11日 森田草平『煤煙』(岩波文庫)

  12月16日  中山義秀『咲庵』(中公文庫)

    (本年12月に限り、第3土曜日です。)

 

 浅田高明氏の『「生命」」と「生きる」こと(ハンセン病を巡る諸問題を視座として)』が刊行されました。

 同人誌「異土」9号、10号に掲載されたものです。前半は北條民雄論、後半はハンセン病が取り扱われてきた歴史が

詳しく分析されています。定価は2500円+税。

 

 お問い合わせは京都の文理閣(075-351-7553)へ、アマゾンでも取り扱っています。

 

2016年のテキスト

  1月9日  金子光晴『どくろ杯』(中公文庫)

  2月13日 水上勉『金閣炎上』(新潮文庫)

  3月12日 平野啓一郎『日蝕』(新潮文庫)

  4月9日  澤地久枝『密約』(岩波現代新書)

  5月14日 三浦哲郎『白夜を旅する人々』(新潮文庫)

  6月11日 野上弥生子『海神丸』(岩波文庫)

  7月9日  葉山嘉樹『海に生くる人々』(岩波文庫)

  8月13日 加藤周一『ある晴れた日に』(岩波現代文庫)

  9月10日   武田泰淳『快楽』( 中公文庫) 

  10月8日    藤本義一『鬼の詩/ 生きいそぎの記』( 河出文庫) 

  11月12日  田中小実昌『アメン父』( 講談社文芸文庫)

  12月10日  石川淳『紫苑物語』( 講談社文芸文庫)  

 

最近の行事

2013年

8月24日  『異土』7号の合評会を行いました。参加者の皆さんありがとうございました。

9月14日   勉強会 テキスト 藤沢周平『白き瓶 小説長塚節』(文春文庫)

            大阪天満橋「エル大阪」南75  2時~5時

        今回は藤沢周平の『白き瓶 小説長塚節』を読みます。長塚節は正岡子規に師事した歌人で、

       小説『土』の作者でもあり、結核で三十六歳で亡くなりました。藤沢は同じ病で療養生活を余儀

       なくされた自らの生を重ねています。ご参加ください。 

      

10月6日~7日  一泊懇親会を計画しています。無事に終了しました。

10月12日  テキスト 富岡多恵子『湖の南 大津事件異聞』(岩波現代文庫)     

11月 9日    テキスト  井上光晴『虚構のクレーン』(新潮文庫) 

12月14日  テキスト 小山清『落穂拾い』(ちくま文庫)

  

 2014年上半期のテキストが決まりました。「日程 テキスト」のページを見て下さい。

 1月11日 『異土』8号が出来ました。内容は同人誌『異土』のページをご覧下さい。

        お申込みは「お問い合わせ」フォームからお願いします。 

      

  1月11日   テキスト 円地文子『虹と修羅』(講談社文芸文庫)

  2月8日  テキスト 中島敦『光と風と夢』(講談社文芸文庫)

      2月9日  秋吉好氏講演会のお知らせ

2月9日(日)PM1:30~3:00 池田市コミュニティセンター2階大集会室(阪急池田駅東口から北300M.池田職安前)において、池田郷土史学会主催の講演会があります。「異土」連載の「田中桐江 ある隠儒の生涯」について話します。時間があれば、お出で下さい。入場無料。

 

   2月22日 『異土』8号合評会を行いました。

   3月 8日 テキスト 横光利一『上海』(岩波文庫)

   4月10日 テキスト 竹西寛子『山川登美子』(講談社文芸文庫)

   5月10日 テキスト 深沢七郎『笛吹川』(講談社文芸文庫)

       6月14日 テキスト 宇野千代『色ざんげ』(新潮文庫他)

   7月12日 テキスト 川上弘美『真鶴』(文春文庫他)

    「異土」9号が出来ました。内容は同人誌『異土』のページをご覧下さい。

        お申込みは「お問い合わせ」フォームからお願いします。

   8月 9日 テキスト 堀田善衞『方丈記私記』(ちくま文庫他)

   9月13日 テキスト 小島信夫『墓碑銘』(講談社学芸文庫他) 

    10月11日   テキスト  鈴木三重吉『桑の実』(岩波文庫他)

☆お知らせ 

      二年前に亡くなられ、会員でもあった松井博之さんの遺稿集『<一>と<二>をめぐる思考

  ――文学・明治四十年前後』が文芸社から八月初旬に発売されました。

                          (Amazonで購入できます)

  11月 8日 テキスト 永井荷風『夢の女』(岩波文庫、集英社文庫他)

☆下関の「長周新聞」10月17日号に「異土」第9号が紹介されました。

 浅田高明『生命(いのち)と生きること<一>――北條民雄とハンセン病をめぐる諸問題を視座として』を中心に、記事が掲載されました。

  12月13日 テキスト 岩野泡鳴『耽溺』(講談社文芸文庫、岩波文庫他)

 

        「異土」10号が発刊されました。「異土」のページをご覧下さい。

 

2015年

   1月10日 テキスト 高浜虚子『柿二つ』(講談社文芸文庫他)

   2月14日 テキスト 三木 卓『震える舌』(講談社文芸文庫他) 

☆下関の「長周新聞」2月4日号に「異土」第10号が紹介されました。

 評論 松山愼介、田崎勝子、小説松村園美、湖海かおる、秋吉好が取り上げられました。

   3月14日 テキスト 長谷川四郎『シベリヤ物語』(講談社文芸文庫他)

   4月11日 テキスト 吉村 昭 『天狗争乱』(新潮文庫他)

   5月 9日 テキスト 吉目木晴彦『寂寥郊野』(講談社文庫他)

     6月13日 テキスト 井上 靖 『後白河院』(新潮文庫他)

   7月11日 テキスト 大佛次郎 『帰郷』(新潮文庫他)

 

       「異土」(第二期)11号が発刊されました。「異土」のページを御覧下さい。

 

☆下関の「長周新聞」7月17日号に「異土」11号が紹介されました。

  評論 野武政、田崎勝子、松山愼介、月野惠子 小説 湖海かおるが取り上げられました。

 

   8月 8日 テキスト 井上光晴 『明日』(集英社文庫他)

   9月12日 テキスト 島村利正 『奈良登大路町・妙高の秋』(講談社文芸文庫)

  10月10日 テキスト 森崎和江 『からゆきさん』(朝日文庫他)

  11月14日 テキスト 永井路子 『北条政子』(文春文庫他)

  12月12日 テキスト 庄野潤三 『夕べの雲』(講談社文芸文庫)

 

★訃報 会員の莫覚さんが脳梗塞のため10月17日に亡くなられました。冥福をお祈りします。

 「莫覚さんを偲ぶ会」を11月14日、割烹「旭」(地下鉄「太子橋今市駅」④番出口スグ)で

 6時から8時半に行います。

 

  〒630-0239  生駒市青山台342-98

                代表者  秋吉好

                

                                                   HP管理者 松山愼介